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Ayana Fujibayashi
まだ見ぬ地へ
その日、夜行バスでその場所へと向かう。
真っ暗な外に浮かび上がる街灯の光を目で追っては、知らない地へ思いを馳せる。
考え事をしながら長い夜をゆっくりと過ごす。
そうしているうちにいつの間にか眠りに落ちる。
朝方遠くの山の間から見える空が少しだけ白んでいた。それでも辺りはまだ薄暗い。
バスから降り、見知らぬ土地にしばらく佇み、不安を抱え静かに歩き出す。
走り去るバスのエンジン音が聞こえなくなり、吐く息は白く漂い消えていく。
ゆっくりと歩いているうちに次第に夜が明け、見えなかった景色がだんだんと見えてくる。
不安は薄れ、これから出会う景色に期待を膨らませていた。
まだ見ぬそれらを見つけるために、ただひたすら歩き続ける。
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